日常の部落問題学習や人権学習の中で、本校児童が書いた作文が、本年度の「部落問題を考える小学生の集い」発表作文に選ばれ、11月11日(於:比奈知文化センター)と、11月27日(於:崇広中学校)の2回にわたり発表して来ました。著作権者本人と保護者の了解を得て、以下にその全文を紹介します。なお、「集い」終了後は、学級で還流がなされ、更なる人権学習の深化を図っているところです。 2003.12.21

「あなたのひと言、差別をなくす」

長瀬小学校六年生 羽後拓実

 

最近、学校でこんな出来事があった。それは、給食の時間の終わる頃、教頭先生が、
「新聞社の人が、コスモスの写真をとりに来るから、だれか女子二人にモデルになってほしいんやけど。」
と言った。その時、ぼくは、なんで女子だけなんだろう、ぼくもやりたいのに女子って決められてるのっておかしいんじゃないかな、と思った。
 そこで、昼休みに他の男子に、
「女子だけ呼ばれるのっておかしいよな。」
とたずねてみると、その子も同じように思っていたようだった。
 外で遊んでいると、新聞社の人が車から降りてきたが、ぼくは、その人に「なんで女子だけモデルにするのですか。」と言う勇気が出ず、言うことが出来なかった。
 女子二人が、写真をとりに行く車に向かって「なんで女子だけ行くの?」と叫んだけど、聞こえていないようだった。

 次の日になっても、まだ、ぼくの気持ちは、すっきりしていなかった。教室でそのことを言ったら、先生が「なぜ、教頭先生が『女子』と言ったのか、たずねてみたら。」と言った。
 ぼくは、一人で行くのはこわくていやだなあと思ったけれど、ぼくと同じように考えていた友達の一人が「いっしょに行こうか。」と言ってくれたので、二人で教頭先生のところに、「なぜ、女子だけがモデルになったのか。」を聞きに行った。

 職員室に入った時は、かなりびくびくしていた。でも、二人で教頭先生に話をすると、それは新聞社の人が女子にお願いしたいと言ってきたからだ、ということがわかった。だから、ぼくと友達は、校長先生と教頭先生に、今度またそういう話があったら、女子だけでなく、男子もモデルにしてもらえるように頼んだ。すると、校長先生は、そうすると言ってくれた。

 ぼくは、このことがあってから、「おかしい」と思ったことは、言って伝えていかないと、なくなっていかないのだ、ということがわかった。

 社会科で学習した渋染一揆では、部落民衆が、おふれ書きに書いてあったことをどうしても認めることができなかったので、五十三の村が話し合って、そのおふれ書きを取り消させようと訴えていった。そのことと似ていると思った。

 ぼくは、女子だけというのはおかしいと思ったけど、一人ではどうすることもできなかった。でも、もう一人同じ考えの友達がいたから、勇気を出して言いに行くことが出来た。

 でも、弥市たちは、ぼくらとはちがって、相手は何をしてくるかわからない武士に、武器となるような物を何一つ持たず、命がけで話し合いに行ったのは、とても勇気があると思った。
 ぼくなら、殺されるかもしれないから、行くことなんてできないと思う。だから、すごい人たちだと思った。
 渋染一揆を勉強して、おかしいと思ったことをそのままにしておかず、みんなで力を合わせてまちがったことを直していかなければならないということが、よくわかった。

 今回の写真のことをきっかけに、ぼくは、もう一度自分の身の回りにおかしいことがないか考えてみた。そしたら、地域の祭りのことで、「おかしいなあ。」と思うことがあった。
 ぼくの住んでいる地区では、神社があるがみこしがなくて、同じ校区の別の地区の神社では、みこしがある。ぼくは、みこしをかつぎたいけど、他の地区のみこしは、かつげないようだ。それなのに、みこしのある地区から他の地区に家を引っ越している人は、みこしをかつげるそうだ。なんだか変だなあ、と思う。みこしをかつぎたい人が、かつげるようにならないのか、一度、家族に相談してみようと思う。

 これまでぼくは、おかしいことに気づかなかったり、気づいてもそれをおかしいって言うことができなかったりしていた。でも、これからは、そんなことがあったら、はっきり言おうと思った。そして、みんなで力を合わせて言い続けていけば、世の中から少しずつ差別がなくなっていくと思う。

「あなたのひと言、差別をなくす」

ぼくが考えた人権標語だ。いつも忘れないでいようと思う。


参考資料:コスモスの写真撮影の記事を見つけられなかったので、代わりに「彼岸花」の写真撮影の記事をご紹介します。
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2003年度「部落問題を考える小学生の集い」発表作文